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生地加工の基本:あなたに合った加工を見つけよう【加工紹介コラム:連載第4回目】

繊維インサイト2026年2月20日

生地加工は、生地が持つ本来の魅力を最大限に引き出し、その用途を広げるとともに、製品としての仕上がりや価値を一層高めることが期待できます。今回は、表面構造を変化させることで製品としての仕上がりや価値を一層高める、「生地に立体感を出す加工」についてご紹介します。製品の差別化や新しいデザインのヒントとしてぜひご活用ください。


目次
1. 生地に立体感を出す加工とは
2. 生地に立体感を出す主な加工のご紹介
     2.1 エンボス加工
   ディープエンボス
   3Dエンボス
  2.2 パンチング加工
   刃型パンチング
   超音波パンチング
  2.3 ピンチング加工
  2.4 プリーツ加工
  2.5 キルティング加工
   マシーンキルト
   コンピューターキルト
  2.6 ピンソニック加工
  2.7 刺繍
   ボーラー刺繍
   コード刺繍
   ワラカット刺繍
  2.8 レーザー加工
  2.9 ディボック加工
  2.10 ニードルパンチ
3. おわりに


1. 生地に立体感を出す加工とは

生地に立体的な凹凸を与え、縫製後の製品の仕上がりをより引き立てるために、多彩な加工技術が用いられます。たとえば、生地と生地の間にワタを挟んで刺繍を施すキルティング加工や、生地に均一な穴を開けるパンチング加工、生地表面に凹凸のある押型模様を付けるエンボス加工など、作り上げたい製品のコンセプトに合わせ、最適な二次加工を選ぶことで、他にはないオリジナリティあふれる生地を作り出すことができます。

 

 

2. 生地に立体感を出す主な加工のご紹介

 

2.1 エンボス加工

エンボス加工とは、絵柄が彫刻された金属ロールに生地をセットし重量をかけながら熱を加えることで、柄を生地表面に刻印し凹凸のある押型模様をつける加工のことで、「型押し」とも呼ばれます。厚地の生地やPVC加工を施した生地、裏貼りによってボリュームを持たせた生地では、より立体感のある凹凸表現が可能になります。絵柄の種類には、絞以外にも、水玉柄やストライプ柄、迷彩柄といったシンプルなものから、シェル柄、ペイズリー柄、千鳥柄など生地を華やかに見せる絵柄まで、幅広いバリエーションがあります。
また、PVC加工を施した後に、絞(シボ)と呼ばれる絵柄でエンボス加工を施すことで、皮革の表皮の凹凸感を表現することができます。

ワタ貼り+エンボス加工


ディープエンボス

ディープエンボスとは、ワタ貼りなどの裏加工を施さなくても、通常のエンボス加工に比べてより深い立体感を表現できるエンボス加工のことです。肉厚な素材に適しており、彫刻が深く施された金属ロールと柔らかい樹脂ロールを組み合わせて使用します。
※下の画像は、裏貼りをしていない生地にディープエンボスを施した例です。肉厚な素材であれば、1枚でもくっきりとした柄が入ります。

ディープエンボス


3Dエンボス

3Dエンボスとは、協力工場が独自に開発した加工技術で、「3Dデジタルジャガード」とも呼ばれます。角度によって柄がちらりと見えたり、無地のように見えたりと、主張しすぎない表情が特徴です。PVC加工を施した生地の上から加工することで、柄がよりはっきりと浮き上がります。
この加工に使用される特殊な彫刻ロールは特許を取得しており、熱と圧力を加えることで生地に柄を付与します。通常の金型とは異なり、図形をさまざまな向きで構成することで彫刻方向に違いが生まれ、3D的な視覚効果が得られます。天然素材にはあまり適さない手法ですが、PVC加工を施した生地であれば対応可能な場合があります。

3Dエンボス

 

 

2.2 パンチング加工

パンチング加工とは、生地やシート状の素材に穴をあける加工のことです。一定の間隔やパターンで穴を設けることで、視覚的な立体感や軽快な表情を生み出すとともに、通気性や軽量性を付与することができます。穴の大きさや形状、配置によって印象は大きく変わり、シンプルなドット状のものから、幾何学柄やオリジナルパターンまで幅広く対応しています。素材は、ナイロンやポリエステル、合成皮革、PVC加工生地などに適しており、アパレルからバッグ、雑貨、資材用途まで幅広く用いられています。


刃型パンチング

刃型パンチングとは、パンチング加工で最も一般的に用いられている加工方法であり、刃を組み込んだ刃型(金型)を用いて生地やシート素材に穴をあける加工のことです。刃型は、丸穴だけでなく、角穴や変形穴、柄状の抜きなどにも対応できるのが特徴です。厚み0.1mmの薄いフィルムから厚み2.0mmの人工皮革や不織布まで、幅広い素材への加工が可能です。生地そのままへのパンチングでも十分な仕上がりですが、PVCを施した後にパンチングを行うことで、より抜けやすく美しい仕上がりになります。

刃型パンチング


超音波パンチング

超音波パンチングとは、柄の付いたロールの上に生地を通し、超音波の振動熱を利用して穴をあける加工方法のことです。協力工場が独自に開発した特許取得のパンチング加工技術です。
超音波発振器から発生した超音波を生地と金型の界面に伝達し、1秒間に約2万回の超音波振動を与えることで摩擦熱を発生させます。この摩擦熱によって素材を溶断し、生地に穴を形成します。
刃型パンチングとは異なり穴の周囲が薄く溶けて固まるため、穴部分がほつれにくく、裏バリも出にくいことが特徴です。ゴルフウェアをはじめとするスポーツ衣類などでの採用が進んでいます。

超音波パンチング

 

 

2.3 ピンチング加工

ピンチング加工とは、生地をつまみながら熱を加えることで、連続した立体的な模様を生地に施す加工のことです。型の種類には、波型や山型などがあり、送り幅やずらし量を調整することでパターンのバリエーションを多彩に広げることができます。生地を流しながら加工するため、つままれた分だけ長さ方向に縮みが生じ、特にニット素材では、若干のストレッチ性が生まれます。基本的には柔らかさのあるポリエステル素材が対象となりますが、綿素材でも樹脂加工と組み合わせることで、ピンチング加工が可能です。独自性のあるデザイン表現を求める方におすすめの加工です。

ピンチング加工

 

 

2.4 プリーツ加工

プリーツ加工とは、生地に一定の間隔で折り目(ひだ)を付け、熱や圧力によってその形状を固定する加工です。生地表面に規則的な凹凸が生まれ、立体感や動きのある表情を付与できるのが特徴です。
加工方法としては、生地を専用の型や紙型に挟み込み、加熱処理を行うことで折り目を定着させます。プリーツの種類には、クリスタル系やアコーディオン系などがあり、素材やプリーツの種類を変えることで、シャープな印象から柔らかな表情まで幅広い表現が可能です。
ポリエステルなどの熱可塑性が高い素材がプリーツ加工に適しており、長期間にわたって形状を安定して保つことができます。一方、綿やレーヨンなどの天然素材は、水にぬれるとひだが取れやすいため、プリーツ加工には不向きです。なお、プリーツは生地幅方向に対して平行に施されるため、加工後は長さ方向に縮みが生じます。そのため、生地投入時には、仕上がり寸法を考慮して長めに設定する必要があります。

プリーツ加工(クリスタル系)

 

 

2.5 キルティング加工

キルティング加工とは、2枚の生地の間に中綿を挟み、キルティング機でステッチを施して固定することで膨らみを持たせ、生地の表面に凹凸を出す加工です。生地に立体感やボリューム感を与えると同時に、保温性やクッション性といった機能性を高めることができます。
中綿には、60g、80g、100gなどさまざまな種類があり、数値が大きいほどボリュームのある仕上がりになります。また、中綿を挟まず裏地に熱収縮性のあるテビロン(テイジンテビロン®の略称。ポリ塩化ビニリデン系の合成繊維)を使用し、表地との収縮差によって立体感を表現する手法を「収縮キルト」と呼びます。
 キルティング加工には、大きく分けてマシーンキルトとコンピューターキルトの2種類があります。 


マシーンキルト

マシーンキルトは、カム式と呼ばれるキルティングマシンを使用して行う加工方法です。ダイヤ柄、ストライプ柄、ひょうたん柄などのシンプルなデザインに適しており、小ロット対応も可能です。
加工賃は、運針数(特定の距離のミシン目の数)や中綿の量に比例しますが、マシーンキルトは柄がシンプルなため運針数が少なく、コストを抑えやすい点が特徴です。使用する柄は、加工所が保有する有型(定番柄)の中から選択します。

マシーンキルト


コンピューターキルト

コンピューターキルトとはNC(数値制御)式のキルティングマシンを使用した加工方法です。マシーンキルトに比べ運針数が多く、刺繍のような複雑で自由度の高いデザイン表現が可能です。その分マシーンキルトよりも加工賃は高くなりますが、意匠性に優れたキルト素材を作ることができます。使用する柄は加工所が保有する既存データのほか、オリジナル柄にも対応可能です。

コンピューターキルト

 

 

2.6 ピンソニック加工

ピンソニック加工とは、柄の付いたローラーに生地を通し、超音波によって発生する振動熱を利用して柄付けや溶着を行う加工方法のことです。ミシンを使用せず、超音波の摩擦エネルギーによって熱可塑性素材を溶着するため、縫製による針穴が生じず、肌ざわりも滑らかです。
また、中綿を挟んで加工した場合でも吹き出しが起こりにくく、キルティング加工のような立体感のある素材に仕上がります。

ピンソニック

 

 

2.7 刺繍

刺繍とは、布地の上に糸を用いて模様や図柄を縫い表す装飾加工のことです。生地表面に直接糸を重ねて表現するため、立体感や高級感のある意匠を付加できるのが特徴です。現在は、安定した品質と量産性に優れる機械刺繍が主流で、ロゴや細かな柄、複雑な図案まで表現することが可能です。使用する糸の種類や太さ、本数、縫い方によって、仕上がりの表情は大きく変わります。また、生地の上に糸を盛り上げるため、プリントにはない陰影や質感が生まれ、製品の存在感を高めます。

刺繍


ボーラー刺繍

ボーラー刺繍とは、ジャガード刺繍機に取り付けられた特殊なキリ(ボーラー)を用いて生地をカットし、その切れ目の周囲を刺繍でかがることで、穴模様を表現する加工のことです。装飾性が高く高級感のある仕上がりになる点が特徴で、レースのような見た目から「ボーラーレース」とも呼ばれます。
近年では、キリの代わりにレーザーを用いて穴をあける方法もあり、従来に比べてよりシャープできれいな仕上がりになります。また、刺繍糸を使用せず、穴あけのみで加工することもできます。

ボーラー刺繍


コード刺繍

コード刺繍とは、布の上にコード状の細い紐や意匠糸、テープ状の素材を縫い付けて模様を表現する加工のことです。テープやリボン状の素材を用いる場合は、「テープ刺繍」や「リボン刺繍」と呼ばれることもあります。テープを立てるように縫い付けたり、巻きながら縫い付けたりすることで、立体感のある豊かな表現が可能です。ベースとなる素材との組み合わせやデザインによって、表情のバリエーションは幅広く展開できます。また、生地を持ち込んでテープ状にカットし、それを縫い付けることも可能で、テープの幅や長さを選べるなど自由度が高い点も特徴です。

コード刺繍


ワラカット刺繍

ワラカット刺繍とは、刺繍機に取り付けた特殊なメスを用いて生地のタテ糸のみを部分的にカットし、そのあとに洗い加工を施すことでカットされたタテ糸が縮み、模様が立体的に浮き出る加工のことです。一般的な刺繍とは異なり、糸を使用せずに柄を表現できる点が特徴で、「糸を使わない刺繍」ともいわれます。特にデニム素材との相性が良く、薄手で柔らかさのあるデニム生地に加工を施すことで、生地の動きに合わせて柄が自然に浮かび上がり、独特な表情を生み出します。

ワラカット刺繍

 

 

2.8 レーザー加工

レーザー加工とは、レーザー照射機で生地を照射し、焼き付けや彫刻などによって柄を表現する加工方法です。インクを使用しないため、プリントのように色落ちの心配がありません。
塩化ビニール(PVC)を含む素材は、加工時に有毒ガスが発生するため対応できませんが、ナイロンやポリエステルなどの合繊繊維、天然素材への加工は可能です。レーザーの照射強度を調整することで濃淡の表現ができ、写真やイラストなどのオリジナル性の高い柄表現も可能です。

レーザー加工

 

 

2.9 ディボック加工

ディボック加工とは、ポリエステルまたはナイロン素材の表面に凹凸を出す加工方法です。柄に合わせて部分的に塩縮剤を使用し、その部分のみを収縮させることで立体的な柄を表現します。
厚みのある生地や硬い生地、塩縮加工などによってあらかじめシワ感のある素材には不向きですが、薄手のポリエステルやナイロンに加工を施すことで、中綿を挟まなくてもキルティングのような立体的な表情を付与できます。

ディボック加工

 

 

2.10 ニードルパンチ

ニードルパンチとは、多数の針(ニードル)を用いて生地表面を打ち込み繊維を絡み合わせることで、起毛感と奥行きのある立体的な表情を与える加工のことです。
複数の生地を重ねて加工することで、下層の繊維を表面に引き出しながら生地同士を一体化させることが可能です。接着剤や縫糸を使用せず、機械的な作用のみで加工できる点も特徴です。
また、繊維同士が絡み合っているため、裁断してもほつれにくく、縫製時の扱いやすさにも優れています。上層と下層生地の組み合わせ次第で、立体感や表情の出方を調整することができ、意匠性の高い素材を作成できます。

ニードルパンチ

 

 

3. おわりに

生地加工は、素材の可能性を広げる魔法のような工程です。「いつもの生地に変化を付けたい」「もっと高級感を出したい」といったご要望があれば、ぜひ加工を取り入れてみてください。仙田株式会社では、生地の販売だけでなく、お客様のイメージに合わせた加工のご提案も承っております。「この生地にエンボス加工はできるか?」「オリジナルの柄を作りたい」など、加工に関するご相談もお気軽にお問い合わせください。複数の加工を組み合わせる二次加工・三次加工のご提案も可能です。

 

 

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