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レーヨンの「生分解性」について実験してみました!

繊維インサイト2023年9月26日

みなさんはレーヨンの生分解性というものをご存じでしょうか?
レーヨンは植物から再生された繊維でセルロースからできています。セルロース*は土や海に埋めたり、放置したりすると分解され無機物になります。そのため、レーヨンの生地も土に埋めると分解されてなくなるのです。
今回は、そのレーヨンの生分解性がどのくらいあるのかを社内で実験してみましたので、ご報告いたします。

(*セルロース=植物の細胞の主成分で炭水化物。二酸化炭素、水、光合成から作られる。)

 

目次
レーヨンってどんな素材?
生分解性について
生分解性の実験報告
AC(アクリルコーティング)と生分解性について
FSC認証取得のレーヨン繊維
仙田で取り扱いがあるレーヨン生地
まとめ

レーヨンってどんな素材?

そもそもレーヨンというのは、天然素材を原料とした再生繊維のことです。再生繊維とは植物に含まれる繊維を取り出し、化学薬品で一度溶解した後に繊維状に再生した化学繊維です。
因みに、近年ではサスティナブル、リサイクル素材への関心が高まり再生=リサイクルという認識が広まっていますが、正確には再生繊維は、天然繊維を科学的に再紡糸した繊維のことを指し、リサイクルされたものはリサイクル繊維と呼び分けています。
英語で再生繊維は【regenerated fiber】と呼ばれます。

レーヨンは元々、絹に似せて作られたものの為、日本では人絹(人造絹糸)とも呼ばれています。天然繊維は短繊維ばかりで絹は唯一の長繊維だったため、絹に似た繊維の開発が化学繊維誕生の理由です。化学繊維はナイロンやポリエステルといった所謂、合繊と呼ばれる【合成繊維】とレーヨンやキュプラなどの【再生繊維】に分かれます。
再生繊維の原料は、レーヨンだと木材パルプ*、キュプラだとコットンリンター*などそれぞれ異なりますが、どれも植物の細胞の主成分であるセルロースを溶かして紡糸します。

(*木材パルプ=木材をチップ化して科学的に処理した後の状態。原料から繊維になった段階。紙を作る際にも使用される。)
(*コットンリンター=綿花を採取した後の種子の表面に残っている短い繊維のことで、そのままでは紡績できないほど短い為再生繊維の原料となる。)

生分解性について

まず、生分解性という言葉をご存じでしょうか。これは物質が微生物によって分解される性質のことを指します。枯れた植物や動物の死骸を土中や水中に埋めると、微生物が分解して水や二酸化炭素になり土に還ります。レーヨンも同じで、土に埋めて放置するとセルロース(有機物)が微生物によって分解され水や二酸化炭素(無機物)になります。

これは同じ化学繊維でも石油を原料としたナイロンやポリエステルなどの合成繊維にはない性質です。

生分解性の実験報告

今回は、社内で本当にレーヨンが分解されるのか実験をしてみました!
生地の専門商社たるもの知識としては勿論ありますが、実際に分解される様子を観測したことがなかったため、仙田のレーヨン在庫品を使って2-3か月程度観測しました。
検査機関のように証明・保証をするものではないためご注意ください。

 〇使用材料
・7cm四方の試験布
・園芸用土(100円ショップで購入) 

〇観測条件
・会社の屋上でカップ・プランターに土と試験布を入れ放置
・毎週月//金に水やりを行い、水曜日は土から取り出し経過を記録
・期間は2023年2月後半~5GW明けまで

〇使用生地
レーヨン9枚
1102 人絹(600)#143 ブルー/レーヨン100/固糊仕上げ
1172 胴口シャンタン#045 プルシャンブルー/レーヨン100/AC
1182 10シャンタン#001 ホワイト/レーヨン100/AC
1182 10シャンタン#074 ウルトラマリン/レーヨン100/AC
1185 10シャンタン水玉pt#035 スカイブルー/レーヨン100/AC
1183 クリーン10シャンタン#029 ネイビーブルー /レーヨン100/AC・抗菌加工
1190 レーヨンリップ#013 ブルー/レーヨン100/AC
1191 ラスター#046 ブルー/タテ:レーヨン ヨコ:綿/AC
1192 アリスト#020 ブルー/レーヨン100/AC
他比較用3
1201 210NOX#105 ブルー/ナイロン100/AC
1377 トロペット#009 スモーキーブルー/再生ポリエステル100/AC
1408 綿オックス#328 ブルー/綿100/固糊仕上げ

ACなしの見本を用意することができたため途中追加しました!
レーヨン5
1172 胴口シャンタン#019 チャコールグレー/レーヨン100/ACなし
1182 10シャンタン#079 ブラウン/レーヨン100/ACなし
1190 レーヨンリップ#013 ブルー/レーヨン100/ACなし
1191 ラスター#014 ミルクティー/タテ:レーヨン ヨコ:綿/ACなし
1192 アリスト#030 ブラック/レーヨン100/ACなし
他比較用1
1201 ナイロン110ツイル#032 ブラック/ナイロン100/ACなし

〇観測記録
2週間ごとの経過をご報告します。

●2023/2/22(水) 0週目
観測開始
土をかぶせる前の写真です。

●2023/3/1(水) 2週目
2週間遅れでACなしの生地を追加しました。
初日から観測している生地は殆ど変化していませんでした。

●2023/3/15(水) 4週目
数日前の大雨の影響でかなり湿っています。
大きな変化はありませんでした。

●2023/3/29(水) 6週目
快晴が続き、生地が乾いて縮んでいます。
穴が開いていたりほつれていたりする箇所が見られてきました。
生地を持つ際に力を入れると千切れてしまい、脆くなっているように感じます。

●2023/4/12(水) 8週目
大雨、強風の影響で試験布を1枚紛失しました。
ACなしのレーヨンは端の方がほつれて生地が崩れてきています。

●2023/4/26(水) 10週目
ACなしの生地は大きく裂けてきています。
全体的に劣化・色落ちも感じられるようになってきました。

●2023/5/10(水) 11週目(最終週)
個展や合同展で展示する予定だったので、77日目を最後にして生地を回収し、土を払いました。
GW中は天気が荒れていて保護できなかったため、 また生地がなくなってしまいました。
比較用で原布をそれぞれ用意していたので比べてみました。

〇結果報告
※下記写真は実験布の中から数種類を抜粋して掲載しております。

●10シャンタンACあり/なし→どちらもところどころ崩壊が見られます。

●アリストACあり/ACなし→どちらもところどころ崩壊が見られます。

●ラスターACあり/ACなし→線状にほつれており、ACなしは一番分解が進んでいます。

●レーヨンリップACあり/ACなし→どちらも生地の裂けが大きく、分解(または紛失)が大きく進んでいます。

●綿オックス→端がほつれ、生地に穴あきが見られます。

●210NOX→ほぼ変化なし。

●トロペット→ほぼ変化なし。

〇考察
ACなしは2週間遅れで観測を始めましたが、どれもACありと比べ同程度、またはそれ以上崩壊が進んでいるように見られます。
・観測は1ヶ月程度で予定していましたが、全体的に1ヶ月では大きな変化が現れず、観測期間を延ばしました。市販の新しい土だったため、微生物が少なく分解に時間がかかったのではないかと考えています。
・綿 / レーヨン交織のラスターが一番ぼろぼろになっていました。タテが細いレーヨン糸だったため分解によってほつれ、バラバラになりやすかったのではないかと考えています。
・天然繊維のためコットン100%の綿オックスは多少の変化がありましたが、ナイロンの210NOX、ポリエステルのトロペットは殆ど変化がありませんでした。

AC(アクリルコーティング)と生分解性について

今回、AC(アクリルコーティング)をした生地はしていない生地より分解されていなかったのですが、レーヨン素材であるからと言ってむやみに生分解するわけではありません。ACや固糊仕上げは、雑貨用の生地としてのハリ感を出したり、ほつれ止めとして以外に生地の品質を安定させる意味があります。土の中、水の中に数か月間埋めて分解させようとしなければ生分解は容易には行われませんのでご安心ください。

しかし、不要となった製品を廃棄する際に、レーヨンの特性や生分解性のある素材を認識していれば、このような土に還す行動を選択肢に入れることができるようになります。そうすれば、環境にやさしい循環への道を一歩ずつ進めることができます。

FSC認証取得のレーヨン繊維

また、仙田のレーヨン在庫品はFSC認証を取得した繊維を使用しています。
レーヨンは結局木を切って作るのだから森林伐採につながってしまうのではないか、という懸念があると思いますが、FSC認証は持続可能な森林の利用のために保護を図る制度です。
レーヨンの原料は主に木材です。原料選びにはトレーサビリティ(透明性=ものの流通経路を追跡可能な状態にすること)がはっきりしていることが重要です。このFSC認証マークは管理された森林から生産された製品であることを消費者に伝えています。

仙田で取り扱いがあるレーヨン生地

今回の実験では仙田で在庫している8種類のレーヨン在庫品を使用しました。それらの生地についてご紹介します。
サンプル帳のご送付、サンプルカットは1m~のご対応もしておりますので、ご興味のある素材がございましたら是非お問い合わせください。

#102 ポプリン(600人絹)
財布・小物用裏地の定番であるポプリンです。比較的薄いので、財布の重ねポケットに使用しても厚みが出づらいのでオススメです。

#172 胴口シャンタン
畝が太めのグログラン生地です。ヨコ糸が2本引き揃えられており、生地の凹凸による強めの光沢は高級感があります。

#182 10シャンタン
レーヨンの裏地の定番で、グログラン調の生地です。
100色を超える色数を在庫しており、トップクラスの色展開をしている素材です。
財布やカードケースなどの小物からハンドバッグまで様々な裏地にご使用頂けます。
#185 10シャンタン水玉pt#183 クリーン10シャンタン(抗菌加工)もございます。

#190 レーヨンリップ
裏地用では希少なリップストップ生地です。上品かつユニセックスな色味で、レーヨン独特の生地感もあるためスポーツ過ぎない洗練された印象です。

#191ラスター
艶やかな光沢を持った高級感のある生地です。
レーヨンとコットンを交織することで光沢感を調節し、他の裏地と比べてフラットな織り感で、生地が反射しても派手にならない上品な見た目です。

#192アリスト
カルゼ織り特有の畝が美しい裏地です。
裏地としては厚手でくっきりとした織り感なので、スタンダードな裏地より存在感があります。スフレーヨンを使い、強くなりがちな光沢感を抑えることで、ギラギラしすぎずスマートな見た目に仕上げています。

まとめ

ご希望の方にはサンプル帳をお送りしていますので、ご興味を持っていただけましたらぜひサンプル帳請求フォームよりお問い合わせください。また、裏貼りやプリントなどの二次加工も承っております。お気軽にご相談ください。

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