お知らせ2025年1月24日
生地加工は、生地が持つ本来の魅力を最大限に引き出し、その用途を広げるとともに、製品としての仕上がりや価値を一層高めることが期待できます。今回は、代表的な生地加工方法の1つである「コーティング」についてご紹介します。あわせて、今回ご紹介する生地加工をまとめた「加工見本帳」と「アルマダ加工見本」のサンプル帳をご用意しております。ご興味がある方はぜひサンプル請求フォームよりお問い合わせください。
目次
1. コーティングとは
2. 主なコーティング加工のご紹介
– AC加工(ハード/ソフト/超・強ハード)
– ウレタンコーティング
– シリコーンコーティング
– Teflon™(テフロン)コーティング
– C0撥水コーティング
– 顔料コーティング
– パラフィンコーティング
3. コーティング加工方法のご紹介
– ナイフコーティング
– ローラーコーティング
4. おわりに
コーティング加工とは生地に合成樹脂(アクリル樹脂やウレタン樹脂など)のペーストを塗布して表面に皮膜を形成させる加工方法です。皮膜をつくることで生地に硬さやハリを与え、水の染み出しを防ぐなどの効果があります。また、シリコーンをコーティングすることで耐久性や耐水性の向上、撥水機能を付与するなど、樹脂成分を変えることでさまざまな機能を持たせることも可能です。
AC(アクリルコーティング)加工は、生地の裏面にアクリル樹脂を塗布し皮膜を作ることで生地に硬さやハリを与えます。ほつれ止め効果によって、生地裁断や縫製の作業性が高まるほか、生地の縫い目が滑脱(力が掛かった際などに縫い目付近の糸がスリップして隙間が空いたり、縫い代が抜けたりする現象のこと)しにくくなる効果も期待できます。また、アクリルの含有量によって生地の仕上がりの硬さを調整することが可能です。アクリルの含有量を増や硬く仕上げる「ハードAC加工」や、含有量を減らし柔らかい風合いにする「ソフトAC加工」などがあります。
ウレタンコーティングは、ナイロンやポリエステルなどの生地の裏面にウレタン樹脂を塗布し皮膜を作ることで防水効果などを付与する加工です。ウレタン樹脂はアクリル樹脂よりも柔らかく伸びがよいですが、加工後の風合いはアクリルコーティングより硬く感じられることがあります。
シリコーンコーティングは、シリコーン樹脂を生地にコーティングする加工方法で、生地に撥水性や耐水性などの機能を付与します。生地がシリコーン特有のさらっとした触感をとなるため、生地自体の風合いがへんかします。また、シリコーンコーティングはプリントが載りにくい、または載っても剥がれるといった特徴があるため、裏面にプリントを施すなど工夫が必要です。
Teflon™(テフロン)コーティングは、テフロン™(フッ素樹脂)を生地にコーティングする加工方法で、生地に撥水性や水分や油分など汚れを付きにくくする防汚性などの機能を付与します。
C0撥水コーティングは、PFASフリータイプの撥水加工です。以前の撥水剤はPFOA(PFASの一種)を含むC8タイプ(フッ素系の原料)が使われていましたが、フッ素系の原料が長期の摂取による人体への蓄積などの懸念、分解されにくく環境への負荷がかかるといった理由から使われなくなりました。近年ではPFOAを含まないC6タイプの撥水剤が主流となりましたが、環境意識の高まりとともにフッ素自体を使わないPFASフリーのC0撥水(非フッ素系撥水剤)が登場しました。環境への配慮が求められる昨今、機能性とサステナビリティを両立させる選択肢として注目されています。
顔料コーティングは、樹脂に水やアルコールに溶けない顔料を混ぜて生地表面にコーティングする方法です。顔料は水やアルコールに溶けず、不透明物質でいわゆる絵具のような染料です。顔料は天然の鉱石や金属の化学反応によって得られる酸化物などから作られる無機顔料と、石油などから合成した有機顔料の2つに分けられます。いずれも色ムラが起きにくいことや耐水性・摩擦などの耐久性を向上させます。革に施すことも多く、革が持つキズや皺などを目立ちにくくしますので仕上げとして活用されています。
パラフィン(ろう付け)は、古くは船の帆などへの撥水として用いられていた加工方法で、撥水効果を付与する加工でした。現在は技術が進化したことにより撥水剤のコーティングや透湿防水フィルムのラミネートが撥水加工の主流となっており、パラフィンオイルによる生地の白化・チョークマークや経年変化によって変わっていく生地の風合いを楽しむ加工として使用されることが多いです。
コーティングの加工方法は、ナイフコーティングとローラーコーティングに大別されます。工場の多くは、生地の特性に合わせてコーティング方法を使い分けています。
ナイフコーティングは、塗布量をドクターナイフで制御します。樹脂を生地表面に押し込むことができるので羽毛や表面の凹凸の多い生地に施しやすいといったメリットがあります。仙田株式会社で協力工場に依頼する際はナイフコーティングが多いです。
ローラーコーティングは、ローラー表面に薄層を形成させて表速により塗布量を制御します。皮膜の厚さを正確にコントロールできるので表面の平滑な薄地の生地に適用される場合が多いです。また、ナイフコーティングは抵抗があり生地が引っ張られるため、ストレッチのある生地やニット生地などはロールコーターを使用することが多いです。
仙田株式会社では、生地の販売だけでなく、お客様のご要望に応じた加工のご提案も行っております。普段使用している生地を加工でアレンジしたい、素材感は気に入っているが厚みが足りないなどのアイディアやお悩みに対してサポートを提供しています。また、生地加工を2回、3回と重ねることで、全く新しい素材を生み出す二次加工も承っております。どんなご要望やご相談もお気軽にお問い合わせください。