お知らせ2025年5月15日
生地加工は、生地が持つ本来の魅力を最大限に引き出し、その用途を広げるとともに、製品としての仕上がりや価値を一層高めることが期待できます。今回は、前回に引き続き代表的な生地加工の方法の1つである、「生地の風合いを変化させる加工」についてご紹介します。また、ここでご紹介する生地加工をまとめた「加工見本帳」と「アルマダ加工見本」のサンプル帳をご用意しております。ご興味がある方はぜひサンプル請求フォームよりお問い合わせください。
目次
1. 生地の風合いを変化させる加工とは
2. 主な生地の風合いを変化させる加工のご紹介
– ウォッシュ加工(ワンウォッシュ/バイオウォッシュ/バイオストーンウォッシュ)
– シルクプロテイン加工
– タンブラー加工
– パラフィン加工
– メロウリンク加工
– 含浸加工
– シワ加工
– チンツー加工
– カレンダー加工(冷カレンダー加工)
– エアフロー加工
– 起毛加工
– 草木染め
3. おわりに
生地本来の風合いや質感を引き立てるために、多彩な加工技術が用いられます。たとえば、生地を洗うことで柔らかな風合いとヴィンテージ感をもたらすウォッシュ加工や、経年変化を楽しめるパラフィン加工、生地の表情をしっかりと固める含浸加工など、作り上げたい製品のイメージに合わせてさまざまな二次加工を施すことが可能です。
ウォッシュ加工(洗い加工)とは、生地を洗うことで付着している糊や不純物を取り除き、素材本来の柔らかい風合いを引き出す手法です。帆布やデニムなどの天然繊維を使用した生地はもちろん、縫製後の製品にも適用でき、洗いによる生地の質感変化やユーズド感を活かせる点が特徴です。
【ワンウォッシュ加工】
ワンウォッシュ加工とは、お湯や水を用いて生地を一度洗い、付着している糊や不純物を落とすことで柔らかな風合いをもたらす、最も基本的なウォッシュ加工の一つです。同時に、生地の縮率を安定させる効果も得られるため、仕上がりの安定性を重視する際にも重宝されます。
【バイオウォッシュ加工】
バイオウォッシュ加工とは、酵素の働きによって綿の主成分であるセルロースを部分的に分解し、生地表面を柔らかく仕上げながら、使い古したようなユーズド感やヴィンテージライクな風合いを生み出す手法です。特に、糊付けされていない生地をさらに柔らかく仕上げたい場合にも有効で、独特の色落ちやソフトな質感を得られる点が特徴といえます。
【ストーンウォッシュ加工】
ストーンウォッシュ加工とは、生地とともに軽石や人工研磨剤を投入し、洗浄時の摩擦によって表面を部分的に摩耗させる仕上げ方法です。摩擦が加わった部分の色が擦れ落ち、ほつれやキズといった表情(アタリ)が生まれることで、ユーズド感と柔らかい風合いを同時に引き出します。特にデニムなど天然繊維を用いた生地に適用されることが多く、ヴィンテージライクな表情を強調したい場合に最適な加工です。
【バイオストーンウォッシュ加工】
バイオストーンウォッシュ加工とは、上記のバイオウォッシュ加工とストーンウォッシュ加工を組み合わせた加工です。2つの加工を組み合わせることで、よりユーズド感やヴィンテージライクな風合いを出すことが可能です。
シルクプロテイン加工とは、主成分に天然シルクから抽出した、シルクプロテインタンパク質(セリシン)を含んだ溶剤を特殊な柔軟剤に入れ、お湯や水で生地を洗うことでシルクの持つ特性を生地に付与することが可能です。生地のコシが抜け柔らかくなり、肌触りがよくなります。
セシリンは人肌と共通した18種類のアミノ酸(タンパク質を構成する物質)で構成されており、特に「セリン」という保湿効果の高いアミノ酸を多く含んでいるため、肌に触れたときの心地よさに加え、保湿性・保温性・放温性に優れた性質を発揮します。特にスエードタッチの合成繊維などにこの加工を施すと、風合いが一段と柔らかくなり、より上質な肌ざわりに仕上がるなど、生地の種類によって仕上がりに個性が出るのも特徴です。
タンブラー加工とは、水を使用せずに生地を柔らかく仕上げる加工方法で、ウォッシュ加工と異なる点が特徴です。高温のドライタンブラー内で生地を繰り返し揉み込むことで、綿本来が持つ柔らかくふっくらとした風合いを引き出せます。また、水を用いないため色落ちを抑えられ、環境負荷の軽減にもつながる手法として注目されています。
パラフィン加工とは、パラフィンオイルを生地表面に塗り込むことで、独特の白化(チョークマーク)や経年変化を楽しめる加工方法です。生地に適度なハリが加わる点も特徴の一つです。もともとは船舶の帆を保護するための防水加工として用いられており、多少の撥水効果も期待できます。しかし、近年は撥水剤の性能が向上したことから、防水性よりも生地の風合い変化を目的とした加工法として幅広く採用されています。
メロウリンク加工とは、仙田株式会社の協力工場が独自に開発した加工技術です。生地表面がベタつかず、しっとりとした質感と適度なハリ感が得られるため、綿素材でも美しいシルエットを演出できます。また、水分率と油分率を高めることで、水や汚れを弾いて繊維内部に浸透しにくくし、生活防水程度の防水効果を付与することが可能です。さらに、段階的に生地の硬さを調整できるため、用途やデザインに合わせて最適な風合いを追求できます。
含浸加工とは、生地を硬化させる手法の一つで、薬剤に生地を浸して繊維の隙間を埋めることにより、しっかりとしたハリ感を生み出す加工方法です。具体的には、交錯する経糸と緯糸の間に糊や樹脂などの薬剤を付与し、隙間を埋めることで生地の剛性を高めます。使用する薬剤の種類や特性によって仕上がりや耐水性が変わる点も特徴で、水溶性の薬剤を用いた場合、濡れると効果が失われるリスクがあります。
シワ加工とは、専用機械を使用し生地にシワを付ける加工です。シワ加工には様々な種類があり、シワの付け方で生地のイメージががらりと変わります。シワを付けた後テンターセットと呼ばれる生地の巾出し工程があり、巾出しの寸法を変えることでシワの形状を変えることが可能です。
【タテジワ加工】
タテジワ加工とは、生地の長さ方向に生地をロープ調にねじりながらビームと呼ばれる金属製の管に巻き付けた状態で罐(かま)に入れ真空状態にして熱を掛けシワを入れる加工方法です。真空状態にすることで巻き付けた生地が締まることによってシワが入りやすくなり、更に熱を掛けるとよりはっきりしたシワが出ます。
【キャッチジワ加工】
キャッチジワとは、生地を細長い袋にしっかりと詰めることでシワを出します。入口の大きさが異なる袋が数種類あり、生地によって変えることでシワを調整しています。袋ジワ、クラッシュジワといった呼び方もされています。
チンツー加工とは、シワを付けた後、熱でプレスし立体的なシワに滑らかさを出す加工です。シワ加工の後にチンツ(つぶし)の一工程を加えることでシワに変化を与えます。
カレンダー加工とは、金属ロールと軟性の樹脂ロール2本のローラーに熱を加えながら生地を通すことで圧力が加わり、金属ロールに当たる面の生地が融けて光沢が出る加工です。生地を押し潰すことにより通気度を落とし防風性を向上させる効果もあります。また、生地を薄くする、ハリ感を出す、表面を平滑にするなどの目的で加工を施すこともあります。生地の素材や加工目的に応じてロールの温度とロールの種類を変えることで光沢感の調整が可能です。カレンダー加工にエンボス加工を加えることでレザーのような見た目に変えるなど、加工の組み合わせ方次第で生地の質感をがらりと変えることが可能なため、昨今のトレンドであるツヤや光沢のある生地を作ることができる人気の加工方法の一つです。
【冷カレンダー加工】
熱と圧力で加工するカレンダー加工に於いて、低温で圧力を加える加工方法を冷カレンダー加工と呼びます。生地のチョークマーク(チョークで書いたような白い筋が発生する現象)の解消などに用いられます。カレンダーとは異なり光沢が出ないことが特徴で、生地の厚みを薄くする、表面を平滑にする、スナッグ(生地の引っかかりにより糸が引き出される現象)の発生を抑えるなどの目的で加工を施すこともあります。
【裏カレンダー(裏シレー)加工】 生地の裏面にカレンダー加工を施すことを裏カレンダー(裏シレー)加工と呼びます。こちらもカレンダーとは異なり光沢が出ないことが特徴で、生地を平滑にして肌触りを柔らかくすることや、生地の綿抜け防止、通気度を低減し防風性を向上することにも用いられます。熱で柔らかくなり押し潰されることにより、織組織の目も潰されて小さくなるためダウン生地の中綿を抜けにくくすることができます。また、通気度を低減し防風性を向上するといったことに多く用いられます。
エアフロー加工とは、釜の中に生地を入れ徐々に温度を上げていき、熱風で回しながら生地に衝撃を与えつつ揉んでいくことで糸に膨らみを出し、生地そのものに柔らかい落ち感とトロミを出すことが可能です。揉んだ生地にはナチュラルなシワ感が出るため、ヴィンテージ感を出すことが可能です。バッグ用途に使う中肉厚の生地は揉むことで柔らかくなりカジュアル感が増します。薄手の生地はエアリーで優雅な雰囲気に仕上がります。熱風の温度と回転数を調節することで、加工の強弱を出すことが可能です。生地のチョークマーク(チョークで書いたような白い筋が発生する現象)の解消にも有効です。
起毛加工とは、生地表面の繊維を針で搔き出し毛羽立たせ、生地の厚さを増す加工のことです。仙田株式会社が主に取り扱う起毛加工は、ニードルパンチと同じ加工機を用います。無数の針が付いた板の上に生地を乗せ高速で往復させることにより、下から針が突き上げ生地の表面に毛を出すことで起毛します。素材の硬さなどによって針の太さを変える、機械を調整するなど細かな対応が必要とされる加工です。代表的な起毛素材には、ウールやコットンで作られる「フランネル」や、皮革の裏側を起毛した「スエード」などがあります。また、丈夫で厚みのある「コーデュロイ」、羊毛などから作る「ボア」なども起毛素材の一種です。バッグ用途では、帆布に起毛加工を施しさらにパラフィン加工を施すなど、加工を重ねることで表面の質感や風合いを出すことが可能です。
草木染めとは、果物や植物などの天然由来の染料を使用した染色技法のことです。仙田株式会社の帆布商品は基本的には反応染料という綿用の色落ちしにくい染料で染色していますが、草木染め染料ならではのやさしい風合いのある色を出すことが可能です。時間の経過とともに色の深みが増す、または退色するなどの経年変化がたのしめます。環境意識の高まりとともに注目されている染色方法の一つです。別注対応としてお好みのカラーリングの染色を承っております。
仙田株式会社では、生地の販売だけでなく、お客様のご要望に応じた加工のご提案も行っております。普段使用している生地を加工でアレンジしたい、風合いを変化させて違った印象の生地にしたいなどのアイディアやお悩みに対してサポートを提供しています。また、生地加工を2回、3回と重ねることで、全く新しい素材を生み出す二次加工も承っております。どんなご要望やご相談もお気軽にお問い合わせください。